小生の手許には三郎が記した「素養検査ニ関スル筆記」なるノート(メモと言った方がよいかも…)が遺っているのだが、これは陸軍予科士官学校の各教練に於ける種々の動作や行動のマニュアル或いは理論説明の様なものである。
今回以降数回に亘ってこの内容を投稿してゆく。
解読結果は以下の通り。
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各個教練(基本)
通則
一、各個教練ノ目的ハ諸制式及諸法則ニ習熟シ
部隊教練ノ確乎タル基礎ヲ作り併セテ軍隊
教育トノ連携ヲ特ニ密接ニスルニ在リ
二、本教育ヲ通ジ特ニ服従心 堅忍持久 闊達敢為
規律節制等ノ諸徳ヲ涵養スベシ
三、各個教練ニ於テ生ジタル固癖ハ常ニ固著シテ之ヲ
矯正スルコト難ク其ノ不備ハ部隊教練ニ於テ之
ヲ補ウコトモ亦難シ 故ニ周密厳格ニ之ヲ行ウ
ト共ニ教練ト連撃(繋?)スル体操ノ利用ニ留意シ以
テ動作ノ正確ヲ期スルコト緊要ナリ
四、教練実施ノ要ハ巧妙ニアラズシテ熟練ニ在リ
而シテ熟練ハ方法ノ適切ナルト復習ヲ厭ハザ
ルトニ依リテ得ラルルモノナリ 故ニ各個教練ハ各
学年ヲ通ジテ絶エズ之ヲ行ウヲ必要トス
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ご覧頂いてお分かりの通り、内容的には左程難しいことが書いてあるわけではない。
しかしながら個々の教練内容に関して目的や具体的な方法が示されているのは(特に)短期間で体得せねばならなかった将校生徒たちにとっては重要かつ有難かったのではないかと思う。
当時の日本軍は「やる気と能力のある奴だけが残る」世界ではなく、「短期間で大量のやる気と能力のある奴を一人前の将校に育成することが絶対」とされていたのである。
因みにこのメモ帳はA5サイズのノートを上下半分に切って使っている。
愈々物資不足も深刻化していた様である…