今回も少々遡ったモノである。
香川丸亀市の日の出旅館で芳一と康男が親子二人で宿泊した際の領収書である。
康男は昭和18年6月10日に香川丸亀市の第64兵站警備隊に補充要員として転属しており、おそらく芳一が夏休みを利用して康男に会いに行ったのであろう。
この時期は三男の三郎が陸軍予科士官学校への進学(受験)を決めた時期であり、芳一がその辺りの相談や情報収集をかねて既に軍隊経験のある長男の康男に会いに行ったのではないかと思う。
当時と現在の貨幣価値で換算すると2名で3万円位の金額であるから左程高額でもないであろう。
ただ、「宿泊費+飲食費」で20円ほどの料金が税とサービス料で総額が1.5倍以上になっている。
やはり「旅館で一泊」は贅沢だったのだろう…
ビールも1本しか頼んでおらず「呑む」ことが目的では無かったのか、或いは節約したのか…
芳一にとっては三郎の進路が本題であったとしても康男の現況も気に掛かっていたことは間違いない。
そして、この1年余り後に康男が戦死することを考えると芳一にとっては本当にかけがえのない時間となってしまったのである…