昭和19年4月15日 三次中学同級生Kさんからの葉書

 

進学・進級結果発表もひと段落し、
各々の当面の進む道が判明した三中同級生からの便りが続く。

今回は陸軍予科士官学校の試験を目前に控えたKさんからの葉書。

 

昭和19年4月15日 三次中学同級生Kさんからの葉書

解読結果は以下の通り。

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拝啓 永らく御無沙汰致してすまない。
其後相変らず元気の事と思う。
僕も相変らず作業に元気よくやって居る。
陸士・海兵の入試も近づくし作業はあ
るし、実に忙しく又苦しい。でも、国家の勝
利の爲にと皆全身全霊を打ち込んで
努力している。君も安心して軍務に勉
励してくれ。又今年は四年五年で陸士
志願者が九十数名居る。君の後にどしどし行くぞ。
さよなら
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短いが苦悩と疲労が感じられる文章である。

中学を卒業し上級学校へ進学した同級生に差を付けられ、早く追いつきたい一心で勉強しようにも日々勤労奉仕の肉体労働で疲れ果ててしまう。
しかし、試験の日は否応なしに迫って来る。

「受験なんてそんなもの。厳しいものだ。」と仰る向きもあろうが、戦時下の異常な重圧の下でのストレスは相当なものであったと思う。

「陸士は5月、海兵は7月」と以前投稿した何方かの便りに軍関係学校試験の時期が記されていたが、戦争の影響で前年よりも実施時期が前倒しされたこともあり、焦る気持ちも強かった筈である。

「国家の勝利の爲にと皆全身全霊を打ち込んで…」と表向きは強がっている様に見えるが、間違いなく戦場へ向かうことになる将来を自ら望んではいなかったのではないか…

しかし、”大量に消費される士官”を早急に育成しなければならない国家事情のため、募集枠の拡がったこの年の”士官養成学校”への志願者は大幅に増えていたのである…