昭和19年4月30日 三郎から父芳一への手紙 天長節大観兵式での大感激を報告

今回は三郎が父芳一に宛てた手紙の投稿。

昭和19年4月29日天長節に行われた大観兵式に召集された際の大感激を興奮冷めやらぬ様子で父へドヤ顔(?)で報告している。

現代でも天皇陛下を至近距離で”拝顔”できる機会はかなり稀だが、当時の国家体制から考えれば”ドヤ顔”どころか一生の自慢話であり、青年三郎の興奮度は相当なものであったであろう。

昭和19年4月30日 三郎から父芳一への手紙

解読結果は以下の通り。

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本丗日外出シテ確カニ小包受取リマシタ。開クノモモドカシク
嬉シクテ故郷ノ香ガ致シマス。色々ト心配ヲオ掛ケ致シテ済ミマセン。
昨廿九日天長節ニハ大観兵式ニ陪観シ実ニ二十米モ離レナイ
所ニ大元帥陛下ヲ仰ギ、恐懼感激所措ク知ラズト云フ所デス。
神々シキ御姿ヲ生マレテ始メテ仰イダノデスカラ當然デス。
陛下ノ御後ニ、三笠宮、高松宮殿下ヲモ拝顔致シマシタ。
東條サンモ勿論、私ノ中隊ノ次ノ中隊ニ東條サンノ息子サンガ
二年生ニ居ラレマス。非常ニ良ク似テ居ラレマス。眼鏡モツルガ上
ノ方ニツイタ円形デナイノヲカケテオラレマス。背丈ハ小サイ方デス。
毎日見マス。ソレカラ、私ノ學校内デ寫シタ寫真ガ出来マシタ
カラ、オ送リ致シマス。コレハ夏休暇ノ時ノ服装デス。余リ寫真
屋ガ上手デハアリマセン。東京都内ニ外出シテ寫シタノガ五月上旬
ニ出来上ル予定デスカラ、コノ寫眞ヲ分配スルノハ考ヘテ行ッテ下サイ。
東京ノ写真屋デ撮ッタノハ半身デ、ヤハリ十枚アリマスカラ。コノ寫
眞ヲ森保ガ二枚位貰ヒニ来ルカモシレマセンカラ、来タラ渡シテ
下サイ。
兄サンノ躰ノ具合ハ如何デスカ。芳子ハ元気デスカ。
オ母サンモ無理ヲセラレヌ様オ願ヒ致シマス
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既にお気付きのこととは思うが、今回の手紙は「漢字とカタカナ」で書かれている。
戦後世代の人間にとって”カタカナ”は外来語を表すイメージが強いが、戦前教育では”ひらがな”より先に”カタカナ”を教えており、公文書なども同様に「カタカナ混じり文」であったことなどから当時の人々は”ひらがな”よりも”カタカナ”の方に馴染みがあった。
ただ普段は「ひらがな混じり文」であったのに何故この手紙を「カタカナ混じり文」で書いたのかは不明である。
飽くまで想像であるが、大元帥(天皇)陛下はじめ皇室の方々の様子を記す関係で公式文書並みに格式のあるものにしたかったのかも知れない。

大元帥陛下、三笠宮、高松宮殿下に続き、東條首相のことに触れているが、皇室の方々に比べ「東條サン」と呼んでいるところが興味深い。
三郎が、当時陸軍大臣、参謀総長も兼務していた東條首相を小ばかにしているとは考えづらく、どう云った状況なのか考えてみた。
小生は子供の頃母(芳子)が「東條さんはいいおひと~♫」と唄っていたのを記憶しており、当時そんな流行り歌があったのであれば「東條サン」と云う呼称も尊称に近いものだったのかも知れない。はたまたそのご子息が陸軍予科士官学校の一学年上の中隊にいることで親近感があったのかもしれないが…

この時の天長節大観兵式の様子がYouTubeにあったのでURLを添付しておく。
この画像のどこかに三郎が写っているかも知れない…
https://www.youtube.com/watch?v=bAuGgqsepzk&list=PLfCTKikq6ntkik5vS02YTA_T30i5E7yJ3&index=9&t=12s

ある程度年配の方々には釈迦に説法となってしまうが、一部ご存知ない方のために説明させて頂く。
「天長節」とは、明治元年から昭和23年までは天皇の誕生日で当時は4月29日であった。終戦後昭和24年から「天皇誕生日」に変更され、昭和天皇崩御直後に「天皇誕生日」ではなくなったがゴールデンウィーク期間の休日であったことなどから「みどりの日」として祝日のまま存続。平成19年に「昭和の日」と名称変更され現在に至る。
ただ、小生などの昭和に生まれ育った世代には「4月29日=天皇誕生日」が染みついてしまっている…

写真を同封していた様だが、確実ではないが以前投稿した下の写真ではないかと思う。

昭和十九年四月九日 三郎十八歳 陸軍予科士官学校にて

 

投稿者: masahiro

1959(昭和34)年生まれ。令和元年に還暦を迎える。 終活の手始めに祖父の遺品の中にあった手紙・葉書の”解読”を開始。 戦前~戦後を生きた人たちの”生”の声を感じることが、正しい(当時の)歴史認識に必要だと痛感しブログを開設。 現代人には”解読”しづらい文書を読み解く特殊能力を身に着けながら、当時の時代背景とその大波の中で翻弄される人々が”何を考え何を感じていた”のかを追体験できる内容にしたい。 私達の爲に命を懸けて生き戦って下さった先達を、間違った嘘の歴史でこれ以上愚弄されないように…。

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